スプレキュアってどんなお薬?使用するタイミングとポイント

スプレキュアってどんなお薬?使用するタイミングとポイント
  • Twitter
  • hatena
  • facebook

不妊治療を始めてみると、聞きなれない用語や馴染みのない薬名を耳にしますが、スプレキュアという薬もそのひとつでしょう。

スプレキュア(薬品名)は、GnRHアゴニストの一種で排卵をコントロールするために、直接鼻にスプレーする点鼻薬もしくは、皮下注射で投与される薬です。

ですが、元々は不妊治療薬ではなく下記のような婦人科系疾患の治療薬として開発され、現在でも多くの医療機関で処方されています。

【 スプレキュアの本来の目的 】

  • 子宮内膜症
  • 中枢性思春期早発症
  • 子宮筋腫

特に、子宮筋腫の治療薬としての効能に定評があり、筋腫の縮小や過多月経、下腹部痛や貧血の改善に優れた効果が認められています。

子宮内膜症や子宮筋腫の女性がスプレキュアを使用すると、女性ホルモンの生成が抑制されて病巣が小さくなるんですね。

では、これらの婦人科系疾患の治療薬として開発されたスプレキュアが、どうして不妊治療薬として多用されているのでしょうか?

その理由は、スプレキュアが女性ホルモンに与える影響が大きく関係しているからなんです!

どうしてスプレキュアが不妊治療に使われるの?

スプレキュアという薬は、全く正反対の特性を合わせ持つ薬として知られています。

  • 排卵を抑制する働き
  • 排卵を誘発する働き

この2つの特性を最大限に活かして不妊治療に用いるからこそ、「スプレキュア=排卵をコントロールする不妊治療薬」と認知されているのです!

「排卵抑制剤」としての役割

排卵には様々なホルモンが影響を与えていますが、その代表格とされているのが脳の視床下部で作られる「GnRH」というホルモンです。

まずは、GnRHが排卵にどのような影響を与えているのか、確認してみましょう。

【 GnRHと排卵の関係 】

  • GnRHが増加すると、排卵を促すホルモンを増やすよう脳下垂体に指令を出す
  • FSH(卵胞刺激ホルモン)が増加し、卵胞の発育が促進される
  • LH(黄体化ホルモン)が増加し、ピークに達する「LHサージ」が起こる
  • 24~36時間後に、成熟した卵胞が卵巣から排出される
スプレキュアには、排卵の出発点であるGnRHの働きを抑制し、自然排卵を防ぐという効果があるんです。

えっ!妊娠したいのに排卵を抑制するってどうゆう事?と疑問に思う人も多いでしょう。

ですが、一定期間とは言えスプレキュアによって人為的に自然排卵を抑制すると、下記のようなメリットが得られる事が実証されているんです。

【 スプレキュアで排卵を抑制する目的 】

  • 成熟した質の良い卵子が育つ
  • 目的の日に卵子を採取できる

排卵抑制剤としてのスプレキュアは、「体外受精のロング法」を希望する女性に対して処方されます。

受精に適した卵子が採取できるかどうかは、体外受精の成否に直結する問題です。

不妊の原因が卵子の未成熟であった場合、成熟する前に卵子が排卵されている可能性が高いと推察されます。

つまり、スプレキュアの服用によって卵子の成長を人為的にコントロールする事で、体外受精の成功率を上げる効果が期待できるんですね。

「排卵誘発剤」としての役割

排卵を抑制するという特性を持つスプレキュアですが、同時に排卵を誘発するという特性も合わせ持っています。

「えっ!抑制するのに誘発もするってどういう事?」と不思議に感じる人も多いでしょう。

その理由は、スプレキュアを長期で使う場合と短期で使う場合とでは、全く異なる作用が現れるからなんです。

【 スプレキュアの使用期間による違い 】

  • 長期使用:GnRHの分泌量を減らし、排卵を抑制する
  • 短期使用:GnRHの分泌量を増やし、排卵を誘発する

スプレキュアを短期間だけ使用すると、下記のような連鎖反応が起こります。

【 短期使用の連鎖反応 】

  • スプレキュアの使用を開始する
  • GnRHの分泌量が急激に増加する
  • FSH(卵胞刺激ホルモン)が増加する
  • LH(黄体化ホルモン)が増加する
  • 排卵が誘発される

上記のような現象を「フレアーアップ」と言い、体外受精のショート法に用いられたり、hCG注射の代用としてタイミング法に用いられる事もあるんです。

スプレキュアのタイミングと使用期間!

スプレキュアを使用する時は、その特性と目的のマッチングが重要になります。

  • 排卵抑制剤として使用:体外受精(ロング法)の成功率を上げる為
  • 排卵誘発剤として使用:体外受精(ショート法)やタイミング法の成功率を上げる為
スプレキュアという薬は、投与後数日間はGnRHの分泌を促進しますが、一週間後くらいから抑制作用が現れてきます。

産婦人科でスプレキュアを勧められた時は、自分が目指す目的の為にどんな効果が得られるのかを、理解しておきましょう。

体外受精:ロング法

体外受精には「ロング法」と「ショート法」があり、どちらも1日3回の点鼻を行います。

ですが、ロング方とショート方ではスプレキュアを開始する時期や使用期間に違いがありますので、事前に把握しておきましょう。

【 スプレキュアを使ったロング法 】

  • 自然に排卵する人:前周期の高温期から使用開始
  • 自然に排卵しない人:事前に内服薬で高温期を作ってから使用開始
  • スプレキュアの使用回数:朝昼晩1日3回、左右の鼻腔に噴霧
  • スプレキュアの使用期間:排卵促進剤を開始する日の朝まで噴霧
  • 卵胞刺激ホルモンの開始時期:生理開始3日目ころから
  • 卵胞刺激ホルモンの使用期間:排卵促進剤の開始まで連日注射(通常8~10日間)
  • 排卵促進剤の開始時期:経腟超音波検査で、18mm以上の卵胞が確認されてから
  • 採卵:排卵促進剤の開始から、排卵が起こる34~36時間後に採卵

体外受精では十分に卵子を成熟させる事が重要になりますので、大まかな手順としては・・

  1. スプレキュアで自然排卵を抑制する
  2. スプレキュアを継続しつつ、卵胞刺激ホルモンを加えて卵巣の中で卵子を成熟させる
  3. 卵子が十分に育ったら、スプレキュアを停止して排卵促進剤によって排卵を促す
  4. 採卵して体外受精を試みる

という手順になりますね。

体外受精:ショート法

ショート法にスプレキュアを使用する場合は、わずか数日だけの短期利用となります。

つまり、スプレキュアの使用初期に見られる女性ホルモンの分泌を増やして排卵を誘発するという性質に、排卵促進剤を加えてダブルの刺激で採卵数を増やすのが目的なんです。

【 スプレキュアを使ったショート法 】

  • スプレキュアの開始時期:生理開始日もしくは、生理2日目ころから
  • スプレキュアの使用回数:朝昼晩1日3回、左右の鼻腔に噴霧
  • スプレキュアの使用期間:排卵促進剤を開始する日の朝まで噴霧
  • 卵胞刺激ホルモンの開始時期:生理開始3日目ころから
  • 卵胞刺激ホルモンの使用期間:排卵促進剤の開始まで連日注射(通常8~10日間)
  • 排卵促進剤の開始時期:経腟超音波検査で、18mm以上の卵胞が確認されてから
  • 採卵:排卵促進剤の開始から、排卵が起こる34~36時間後に採卵

ロング法に用いる場合は、排卵を抑制する為に高温期~排卵促進剤を開始するまで、ショート法に用いる場合は排卵を誘発する為に、生理開始直後~排卵促進剤を開始するまでスプレキュアを使用する、と覚えておくと分かりやすいですね。

タイミング法に活用する場合

不妊治療のファーストステップとして知られるタイミング法ですが、成功率をアップさせるためにスプレキュアの併用を推奨する産科医も少なくありません。

スプレキュアが持つ排卵誘発の特性を利用し、排卵のスイッチとも呼ばれるLHサージを促す事で、より正確な排卵日を予測するのに役立ちますよ。

【 スプレキュアを使ったタイミング法の手順 】

  • 生理10日目~12日目:超音波検査で排卵日を予想する
  • 生理12日目~13日目(排卵36~40時間前):スプレキュアでLHサージを促す
  • 生理13日目~14日目:性交渉をもつ
  • 生理14日目以降(排卵後):黄体ホルモンを補充して着床環境を向上させる
  • 生理28日目以降:妊娠の有無を確認

スプレキュアなどを併用したタイミング法は、卵胞刺激法とも呼ばれており、排卵のタイミングをコントロールする事も狙いの一つに含まれます。

スプレキュア点鼻薬の使い方!

スプレキュアは、病院で投与する場合は注射によって行われますが、通常は点鼻薬としては自己管理の元、自宅で投薬しなければなりません。

【 スプレキュア点鼻薬の使用方法 】

  • スプレキュアの成分を十分に取り込めるように鼻をかんでおく
  • 軽く上体を倒し、息を吸いながら左右の鼻腔内でワンプッシュずつ
  • 鼻の奥まで行き渡らせるイメージで上を向き、数十秒間ほど鼻から静かに呼吸する
  • 使用後は、ティッシュなどでノズルを拭き取り清潔に保管

スプレキュアの点鼻は、できるだけ時間を空けて1日3回、左右の鼻腔にそれぞれ噴射します。

連続使用を避けるために、朝昼晩に行うよう習慣づけておきましょう。

スプレキュアに副作用はないの?

排卵の抑制と誘発という正反対の性質を持つスプレキュアは、前半と後半で全く違った副作用が現れるのも特徴の一つです。

  • 前半:生理の時に現れる諸症状が重くなる
  • 後半:更年期のような症状が現れる
つまり、短期利用の場合は前半に見られる副作用だけで済みますが、長期利用の場合は前半と後半の両方の副作用と折り合いを付けなければなりません。

また、スプレキュアの副作用には、主だったタイプと稀に起こる重大な副作用に分けられます。

スプレキュアの主な副作用

販売元のひとつである持田製薬によると、承認時までに7,935件を対象にした使用成績調査が行われ、その内1,336件(16.8%)に何等かの副作用が認められたと報告されています。

【 主な副作用 】

  • ほてり:426件(5.4%)
  • 肩こり:343件(4.3%)
  • 頭痛:309件(3.9%)
  • 不正出血:232件(2.9%)

スプレキュアの重大な副作用

更に、発症する確率は低く稀なケースではあるものの、下記のような重大な副作用が現れる事もあり、使用中は担当医との密接な連携が不可欠とされています。

【 重大な副作用 】

  • ショック・アナフィラキシー様症状
  • うつ症状
  • 脱毛
  • 狭心症・心筋梗塞・脳梗塞
  • 血小板減少・白血球減少
  • 大量の不正出血
  • 卵巣のう胞破裂
  • 肝機能障害・黄疸
  • 糖尿病の発症、もしくは増悪

スプレキュアが要因とされる重大な副作用の中には、生命に関わる疾患も含まれています。

服用中に何らかの異常を感じた場合は、迷わず担当医に連絡を入れて指示を仰ぎましょう。

スプレキュアって誰でも使えるの?

不妊治療薬として多くの産科医に有効性が認められているスプレキュアですが、残念ながら使用を控えた方が良いと判断されるケースもあります。

【 スプレキュアが使用できない人 】

  • 医学的に原因が判明していない「異常性器出血」がある:悪性腫瘍の可能性を考慮
  • 妊娠している可能性がある女性:妊娠が継続できない恐れがある
  • 授乳期の女性:母乳への影響が動物実験で立証されている
  • スプレキュアを含むGnRH誘導体に関連する既往歴:副作用を考慮

とは言え、スプレキュアが使えないからと言って落胆する必要はありません。

不妊治療には、スプレキュア以外にも様々な薬剤がありますしアプローチ方法も選べますから、担当医と相談してご自分の状態に最適な方法を模索してみましょう。

スプレキュアの費用について

不妊治療を受けている人の中には、何年も継続している人も少なくありません。
だからこそ気になるのが、費用面の問題と言えるでしょう。
一体、スプレキュアの費用はどれくらいなのでしょうか?

スプレキュアに保険は適応されるの?

病院で処方される薬剤というのは、保険によって服用する目的が定められていますので、本来の目的以外に使用する場合は保険が適応されません。

つまり、スプレキュアの本来の目的が子宮筋腫や子宮内膜症などの治療である以上、不妊治療薬としては保険適応が認められないのです。

【 スプレキュアと保険の関係 】

  • 子宮筋腫や子宮内膜症などの治療を目的として処方された場合:保険適応
  • 不妊治療を目的として処方された場合:保険適応外により全額自己負担

不妊治療というのは、見えないゴールに向かって走り続けるマラソンのようなモノ。

いつ頃までに妊娠できるのか分からない状態で保険適応外の薬を使用する事に、不安を感じる方も多いでしょう。

ですが、スプレキュアに限らず保険上としては認められていないものの、複数の研究結果から不妊治療に有効だとされる薬は数多く存在しています。

不妊治療を目的としてスプレキュアを使用する場合は、保険の対象外である事を受け入れた上で、必要量や費用の目安について説明を受けておきましょう。

スプレキュアの価格はどれくらい?

不妊治療としてスプレキュアを使用する場合、保険は適応されませんので全額自己負担となります。

そこで気になるのが、実際に支払うスプレキュアの価格ですよね。

スプレキュアの価格は、通院している産婦人科によって多少の違いはあるものの、スプレキュア点鼻液0.15%の15.75m1本につき、¥10,000~¥15,000程度が相場と言われています。

最近では、スプレキュアのジェネリック医薬品として「ブセレキュア」という薬が処方されており、正規品よりは低価格で手に入れる事ができるようです。

とはいえ、排卵抑制剤としてスプレキュアを使用する場合は、どのくらいの期間をかけて卵子を成熟させるかによって、費用が大きく異なります。

使用する目的や手順と合わせて、費用面についても説明を受けて納得してから始める事が大切ですね。

使用目的に合わせて服用しよう!

不妊治療の成否は、パートナーや担当医とのコミュニケーションに掛かっていると言っても過言ではありません。

特に、数ある不妊治療薬の中でも特殊なのがスプレキュアです。

長期的に使用すれば排卵を抑制し、短期的に使用すれば排卵を誘発しますので、正反対の特性を目的に合わせて正確に使い分けなければなりません。

少し複雑に思えるかもしれませんが、しっかりと事前の説明を受けてメカニズムを理解し、納得してから治療をスタートさせましょう。

SNSでシェア
  • Twitter
  • hatena
  • facebook

こちらの記事もオススメです

ページ先頭に戻る