妊娠中に子宮筋腫が見つかった場合の分娩時のリスクとは

妊娠中に子宮筋腫が見つかった場合の分娩時のリスクとは
  • Twitter
  • hatena
  • facebook

あくまで良性腫瘍である子宮筋腫は、40代女性の3人~4人に1人は持っていると言われるほど、ポピュラーな疾患です。

子宮ガンや子宮肉腫などの悪性腫瘍と違って、周囲に浸潤したり他の臓器に転移する事もありませんので、ダイレクトに生命を脅かす疾患ではありません。

但し、出来てしまった場所や筋腫の大きさ、数の多さによっては母体や胎児に悪影響を及ぼすケースがあるので注意が必要です。

しかも、子宮筋腫の中には自覚症状が乏しく、自分が子宮筋腫である事に気付かない事も。その結果、妊婦健診で初めて子宮筋腫が発見される事も少なくありません。

いざという時に慌てないように、妊娠中に子宮筋腫を合併する確率やリスクの特徴、分娩への影響などについて把握しておきましょう。

妊娠中に子宮筋腫が見つかる確率は?

「無事に出産予定日を迎えたい!」と願っているママさんにとって、妊娠中に発覚した子宮筋腫はショックですよね。

ですが、痛みや不正出血などの症状が現れない場合も多く、定期的に婦人科検診を受けていないと気付きにくいというのが、子宮筋腫の特徴でもあるのです。

では、一体どのくらいの頻度で妊娠中に発覚するものなのでしょうか?

日本産婦人科学会が発行している資料によると、妊娠中に子宮筋腫を合併する確率は、0.5%~2%程度と報告されています。

つまり、100人中1人~2人ほどの妊婦さんに見つかっている事になりますね。

ちなみに、独自の調査結果を公表している産院も多く、その結果には多少の違いが見受けられます。

  • 三重県の山本産婦人科・・・1%~4%の頻度で発見
  • 千葉県の佐野産婦人科医院・・・2.7%〜10.7%ぐらいの頻度で発見
  • 滋賀県の近江草津徳洲会病院・・・0.5%~2.5%の頻度で発見

子宮筋腫は、閉経と共に自然治癒していく傾向から、女性ホルモンの一種であるエストロゲンに刺激されて成長すると考えられていますが、発症するメカニズム自体は解明されていません。

その為、「妊娠中だから子宮筋腫になりやすい!」というよりは、

  • 「妊娠前からあった子宮筋腫が妊婦健診で見つかった!」
  • 「小さかった子宮筋腫が妊娠中に大きくなった!」

というケースが多いと推察されます。

シーン別リスクの種類

子宮筋腫が及ぼすリスクは様々ですが、ここでは、「妊娠中」「分娩時」「産後」に分けてご紹介しましょう。

▼妊娠中のリスク

  • 血栓症
  • 流産や早産
  • 常位胎盤早期剥離
  • 前期破水
  • 骨盤位などの胎位異常
  • 子宮内胎児発育不全
  • 骨盤痛

▼分娩時のリスク

  • 帝王切開の必要性が高まる
  • 微弱陣痛
  • 産道通過障害
  • 出血量の増加

▼産後のリスク

  • 弛緩出血
  • 産後出血
  • 子宮復古不全
  • 感染や変性による痛みや発熱

代表的なリスクの特徴は?発生比率はどれくらい?

出産を控えているママさんにとって、最も気がかりなのが「リスク」についてでしょう。

しかし、妊娠中に子宮筋腫が見つかったからと言って、誰もが高いリスクに晒される訳ではありません。

事実、何の問題もなく無事に出産している妊婦さんも多いんですよ。

子宮筋腫が母体や胎児に及ぼす影響は、出来てしまった場所や筋腫の大きさによって違いがあります。

治療の必要性やタイミング、優先順位についても医師と相談してみましょう。

血栓症を誘発するってホント?

子宮は、胎児の成長と共に大きく膨らんでいきますが、異物である子宮筋腫の存在が、更に子宮の容積増大に拍車を掛けてしまいます。

その結果、子宮周りの血管が圧迫されて血流が妨げられ、「血栓」という厄介な状態を引き起こしてしまうのです。

普段は、血管の中を滞りなく巡っている血液ですが、子宮筋腫の圧迫を受けて塊りになり、血管壁を傷つけてしまう事も。

初期段階である「下肢静脈血栓」から始まるのが一般的で、重症度の高い「肺梗塞」へと進行するケースも報告されています。

流産や早産のリスクは?

数あるリスクの中でも特に気になるのが、「流産」や「早産」についてでしょう。

妊娠中に子宮筋腫になった場合、子宮から胎盤へかけての血流障害リスクが高まり、最悪の場合、流産してしまう事もあるのです。

千葉県にある佐野産婦人科医院によると、繰り返し流産してしまうケースの内、約7%が子宮筋腫による影響ではないか?と警鐘を鳴らしています。

また、正常な妊娠と比較して早産する確率が1.5倍と高いのも、見逃せないポイントです。

特に、筋腫の大きさが5㎝以上で、尚且つ「胎盤付着部位」に認められる場合は、早産してしまうリスクが更に上昇すると言われています。

常位胎盤早期剥離のリスクが高い!

まだ赤ちゃんが子宮内に居るにも関わらず、胎盤が剥がれ落ちてしまう事を「常位胎盤早期剥離」と言い、ママさんと赤ちゃんの両方にリスクをもたらす疾患です。

▼常位胎盤早期剥離のメカニズム

  1. 子宮内で胎盤が剥がれ落ちる
  2. 子宮内で出血が始まる
  3. 子宮の内圧が高まり、子宮が硬くなる
  4. 痛烈な痛みを伴う
  5. 胎盤から赤ちゃんへの酸素供給が阻害される

ママさんへの影響もさることながら、特筆すべきなのが赤ちゃんへの悪影響です。

胎盤は、ママさんから赤ちゃんへ酸素を供給する為に欠かせないパーツ。たとえ、無事に出産できたとしても酸欠による後遺症が残ってしまう事も少なくありません。

ちなみに、滋賀県にある近江草津徳洲会病院の調査によると、胎盤早期剥離が発症する比率は、筋腫合併妊娠の内10.8%にも上り、特に胎盤直下に筋腫が見つかったケースでは、57%という高いリスクが報告されています。

日本産婦人科学会によるリスク比率

日本産婦人科学会によると、3㎝以上の筋腫が認められる子宮筋腫合併妊娠について、個別のリスク比率が公開されています。

  • 早産・・・10%
  • 子宮内胎児発育不全・・・10%
  • 前期破水・・・10%
  • 常位胎盤早期剥離・・・10%
  • 胎位異常・・・増加傾向にある
  • 骨盤位・・・通常の4倍
  • 骨盤痛・・・5cm以上の場合は25%

上記の項目に加えて、母体への影響として尿閉などの「排尿障害」をはじめ、周囲臓器への圧迫が認められるとの記載もあり、むくみやすい妊婦さんにとっては、過酷な状況と言えるでしょう。

産後もリスクが続くってホント?

妊娠中に大きく膨らんだ子宮は、分娩の終了と共に収縮を繰り返し、急速に元の大きさへと戻っていきます。

この働きが正常に作用しない状態を「子宮復古不全」と言い、妊娠中に子宮筋腫が見つかった場合の代表的なリスクと言えるでしょう。

▼子宮復古不全について詳しくはこちらから

妊娠と子宮筋腫が重なった事で子宮復古不全を引き起こし、更には産後出血のリスクまで高まってしまうのです。

▼産褥期への影響

  • 子宮復古不全
  • 悪露滞留
  • 感染
  • 壊死
  • 子宮内反症
  • 強度の後陣痛
ちなみに、千葉県にある佐野産婦人科医院の調査によると、子宮筋腫を伴わない正常妊娠と比較して、1.8倍も高いと報告されています。

加えて、感染や変性が重なった場合、発熱や強い後陣痛を伴う症例も少なくありません。

子宮筋腫合併妊娠の分娩法は?帝王切開になるケースとは?

妊娠中に子宮筋腫になってしまう事を「子宮筋腫合併妊娠」と言い、ハイリスク妊娠に分類されます。

その為、「子宮筋腫合併妊娠=帝王切開」と思い込んでしまう人も多いようですが、実際には子宮筋腫合併妊娠であっても自然分娩で無事に出産している人も多いんですよ。

では、どのような時に帝王切開が適応されるのでしょうか?

▼子宮筋腫合併妊娠で帝王切開が適応されるケース

  • 筋腫による影響で、胎児の下降が妨げられている場合
  • 陣痛微弱によって、分娩時間が長期化する場合
  • 産道を塞ぐ部位に筋腫が認められる場合(頚部子宮筋腫など)
  • 過去の筋腫核出術による影響で、子宮破裂の危険性がある場合
  • 胎児機能不全
  • 胎位異常
  • 回旋異常

日本産婦人科学会の調査によると、子宮筋腫合併妊娠による帝王切開は増加傾向にあり、通常分娩と比較して6倍も多いと報告されています。

妊娠中に見つかった子宮筋腫はいつ取るの?

妊娠する前に子宮筋腫が見つかった場合は、その症状や妊娠希望の有無に合わせて、いくつかの選択肢が提示されます。

では、妊娠してしまってから発見された子宮筋腫は、何時どうやって対処したら良いのでしょうか?

分娩前に手術で切除すべき?

子宮筋腫合併妊娠は、妊娠中に起こる常位胎盤早期剥離をはじめ、様々なリスクを伴います。中には、分娩時のリスクもありますから、「出産予定日の前に手術で切除した方が、分娩時のリスクを減らせるのでは?」と感じる妊婦さんも多いでしょう。

結論から言うと、「妊娠中の手術=禁忌」というのが産科医の定説ですから、妊娠中の子宮筋腫は保存的に対処するのが一般的です。

但し、有茎性の筋腫に限り妊娠12週~13週に核出術が検討されるケースがあり、筋腫の変性によって致し方ないと判断された場合に限定されています。

帝王切開と一緒に筋腫核出手術はできるの?

経膣分娩のリスクが高く、帝王切開が適応された場合、「子宮筋腫もまとめて切除すれば一石二鳥!」なんて思っていませんか?

確かに、「どうせ手術するなら一度で済ませたい!」「痛い思いは一度で十分!」と思うのも当然かもしれませんね。

ですが、帝王切開と筋腫核出術は、別々に行うのが一般的です。

たとえ帝王切開であってもリスクを伴うのが子宮筋腫合併妊娠の特徴。場合によっては、帝王切開の途中で胎盤が剥がれてしまったり、出血量が著しく増加するケースも見過ごせません。

加えて、胎位異常をはじめとする不安要素もありますので、まずは無事に出産する事だけに注力すべきでしょう。

出産後ならいつでもOK?

妊娠中も帝王切開を受ける時もダメなら、出産後に対処する事になりますよね。では、出産後ならいつ手術しても良いのでしょうか?

通常、妊娠中に見つかった子宮筋腫は、子宮の大きさが元の状態へ戻るのを待ってから行われるのが一般的です。

分娩後も筋腫の大きさが変わらず縮小しない場合は、半年ほど経過観察を行い、摘出手術の必要性が検討されます。

この時、次の妊娠を希望するかどうかで対処法が違ってきますので、担当医と相談しながら将来を見据えて判断しましょう。

自分の子宮筋腫の状態を確認しておきましょう

確かに、子宮筋腫が母体や胎児に及ぼす影響は、一つや二つではありません。中には、流産や早産など深刻なケースもあり、決して軽視できない疾患と言えるでしょう。

とは言え、妊娠中に子宮筋腫が見つかったからと言って、ナーバスになり過ぎるのも問題です。

定期的な妊婦健診を通じて筋腫の状態を把握し、医師の指示に従って適切な対処を施せば、無事に出産する事も可能です。

出来てしまった場所や筋腫の大きさ、数の多さによってリスクの度合いが違ってきますので、どんなリスクがあるのか、対処法にはどんな選択肢があるのか、納得できるまで担当医と相談してみて下さいね。

SNSでシェア
  • Twitter
  • hatena
  • facebook

こちらの記事もオススメです

ページ先頭に戻る