子宮が降りてくる原因は?子宮下垂と子宮脱のリスクについて

子宮が降りてくる原因は?子宮下垂と子宮脱のリスクについて
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子宮というのは、女性のシンボルとも言われている反面、病気になったら計り知れないダメージを受ける特別な臓器です。

ですが、早期に発見する事で進行を食い止められるケースも多く、「子宮下垂」や「子宮脱」もこれに含まれます。

確かに子宮下垂や子宮脱は、細胞が悪性に変化するガンのように命に関わる疾患ではありません。

ですが、症状が進行して日常生活に支障が出るような場合は、子宮を全摘しなければならないケースも報告されています。

子宮が下方向へ降りてくる子宮下垂や子宮脱は、一体どんなリスクを伴う病気なのでしょうか?

今回の記事では、子宮下垂と子宮脱の違いや自覚症状、なりやすい人の特長や治療法など多くの女性が抱いている疑問について詳しくご説明します。


子宮下垂と子宮脱の違いは?

通常、子宮というのは前方の膀胱と後方の直腸に挟まれており、骨盤低筋によって下から支えられています。

この限られたスペースを生理学的可動範囲と言い、範囲内に納まっていれば問題はありません。

ですが、子宮が本来あるべき位置から移動し生理学的可動範囲に留まれない状態を「子宮の位置異常」と言い、子宮下垂や子宮脱もこれに含まれます。

同じ子宮の位置異常に含まれる子宮下垂と子宮脱ですが、一体どんな違いがあるのでしょうか?

  • 子宮下垂:本来あるべき位置から下降してはいるものの、腟内に留まっている状態
  • 子宮脱:子宮下垂が進行し、腟内から脱出した状態
子宮下垂も子宮脱も、子宮が下方向へ降りてくる現象は共通しています。但し、下降した子宮が膣内に留まっているかどうかで区別されているのです。

下垂の程度による分類

広島県にある医療法人双藤会 産科・婦人科 藤東クリニックによると、子宮の下垂程度によって下記のように分類されています。

  • 子宮脱1度:膣口ギリギリまで子宮が下垂している「子宮下垂」
  • 子宮脱2度:子宮の一部が体外に脱出している「不全子宮脱」
  • 子宮脱3度:子宮の半分くらいが体外に脱出している「不全子宮脱」
  • 子宮脱4度:子宮全体が体外に脱出してしまっている「完全子宮脱」

つまり、子宮下垂とは子宮脱の一種であり、症状が軽い初期状態と解釈されているのです。

子宮下垂や子宮脱の自覚症状は?

子宮の位置が下方向へ降りてくる子宮下垂や子宮脱。
日常生活で本人が感じる自覚症状には、どんなものがあるのでしょうか?

初期症状

  • ほとんどの場合、自覚症状が現れない
  • 子宮の下垂感
  • 下腹部の不快感
  • 一日の中で症状の度合いに変化がある

初期段階の自覚症状は、ほとんど感じられないという人が多いようです。

多少の不快感や異物感があったとしても、朝と夜とで自覚症状に差が見られるのも初期段階の特長と言われています。

【 自覚症状の変化 】

  • 朝の症状は軽い:横になっている睡眠中は、腹圧の影響が少ないから
  • 夕方から悪化する:立っている時間が長いほど、腹圧の影響を受けるから

子宮脱2度~の自覚症状

  • 女性器の違和感
  • 頻繁に尿意を感じるようになる
  • 自分の意思とは関係なく排尿してしまう尿失禁
  • くしゃみなど、お腹に力が入った時に起こる腹圧尿失禁
  • 脱出した腟や子宮腟部が乾燥する
  • 潰瘍形成
  • 感染
  • 分泌物の増加

本人が子宮下垂や子宮脱に気付くのは、実際に子宮の一部が体外に脱出する2度以降がほとんどです。

病状が進行した時の自覚症状

  • 尿意は感じるものの排尿には至らない排尿困難や尿閉
  • 頑固な便秘
  • 歩行時に苦痛を伴う
  • 子宮頸部の肥大
  • 刺激による脱出した部位からの出血

子宮脱の症状が進行すると、それまで現れていた頻尿や腹圧尿失禁などが軽くなり、逆に尿が出にくくなる傾向にあります。

ところが、治療により子宮脱が改善されると、頻尿や腹圧尿失禁などが再発してしまうという逆説的な現象も。

子宮下垂や子宮脱の治療を受ける場合は、治療後のリスクについても説明を受けておきましょう。

子宮下垂や子宮脱は〇〇を合併する!?

自覚症状の項目を見てみると、排尿や排便に関する症状が多い事が分かります。

なぜ、子宮が下方向に降りてくると排尿や排便に影響するのでしょうか?

なぜなら、子宮下垂を含む子宮脱は子宮だけが単独で降りてくるケースは珍しく、下記のような疾患を合併しているケースが多いからなんです。

【 合併症の種類 】

  • 排尿に影響する疾患:膀胱脱/膀胱瘤
  • 排便に影響する疾患:小腸脱/直腸瘤

また、「膣脱」を合併するケースも非常に多いとされています。

子宮筋腫などの治療で子宮を摘出した女性に見られるのが特長で、「膣断端脱」とも呼ばれている疾患です。

子宮が降りてくる原因は?

子宮下垂や子宮脱の原因は、下記の要因が代表的と言われています。

【 子宮下垂や子宮脱の主原因 】

  • 骨盤底の腹膜や結合組織、靭帯などの伸縮性が低下して緩む
  • 肛門挙筋など、骨盤低の中で子宮を支えている筋肉が破れて隙間が出来る

子宮という臓器は、伸縮性の高い靭帯や筋肉に支えられているからこそ、本来あるべき生理学的可動範囲内に留まっていられるのです。

ですが、支えとなる靭帯や筋肉の伸縮性が弱まるにつれて元の形状に復元する力も弱まってしまいます。

【 靭帯や筋肉の影響 】

  • 正常な靭帯・筋肉:一時的に下降した子宮を持ち上げて、元の位置に押し戻せる
  • 弱った靭帯・筋肉:伸びきったゴムと同様、降りてきた子宮を持ち上げられない

子宮が下降しやすい人は?経産婦に多いってホント?

子宮下垂や子宮脱は、加齢や体質によっても大きな影響を受けますが、下記の項目に該当する人は特に発症しやすいと言われています。

【 子宮下垂や子宮脱になりやすい人 】

  • 出産経験者
  • 便秘がちな女性
  • 肥満がちな女性
  • 立ち仕事が多い女性
  • 介護などでいきむ機会が多い女性
  • 60代以上の女性

子宮下垂や子宮脱の主原因に挙げられる、靭帯や筋肉の衰え。

その引き金として代表的なのが、分娩時のいきみによる母体へのダメージです。

その理由は、数ある子宮を支えている筋肉の中でも特に重要な役割を担っている「肛門挙筋」が、出産時にダメージを受けるケースが多いからなんです。

その為、出産を経験している女性は経験していない女性よりはるかに子宮脱になりやすく、多産であるほどリスクが高いと言われています。

【 リスクの高い経産婦 】

  • 多産
  • 難産の経験者
  • 高齢出産

特に、30代後半以降で出産した人は骨盤底へのダメージが著しく、一時的に子宮脱になる人も少なくありません。

子宮下垂や子宮脱が進行するとどうなるの?

子宮下垂や子宮脱は、年齢を重ねるにつれて少しずつ進行する疾患です。

初期段階であれば日常生活に支障はありませんが、放置したままの状態で年齢を重ねてしまうと、加齢の影響もあいまって下記のような障害に見舞われるケースも報告されています。

【 子宮下垂や子宮脱を放置するリスク 】

  • 排尿障害や排便障害
  • 歩行困難
  • 性交痛
  • 膀胱脱や小腸脱、直腸脱など
  • 症状が重い場合は子宮全摘

出産した全ての女性がかかる訳ではなりませんが、出産後の数年間は症状が現れず、加齢と共に症状が現れてくるケースも少なくありません。

ちなみに、近年では子宮や膀胱、小腸などが体外に脱出する症状を総称して「骨盤臓器脱」や「性器脱」と呼んでいます。

子宮下垂や子宮脱の治療法は?

出産後、一時的に子宮脱になってしまう人も居ますが、全ての経産婦が恒久的な子宮脱に進行する訳ではありません。

その為、一ヶ月検診で子宮の位置が本来あるべき膣内に戻っていれば、今すぐ治療の必要は無いと判断されます。

ですが、日常生活に支障が出るような場合は、加齢の影響が加わる前に治療を始めた方が良いかもしれません。

子宮下垂や子宮脱の治療は、大きく分けて下記の2種類に分類されます。

【 治療の種類 】

  • 保存的治療:骨盤底筋体操/フェミクッション/ペッサリー療法
  • 手術的治療:子宮摘出術や膣前壁形成など/ル・フォール手術/メッシュ手術

保存的治療その1:骨盤底筋体操

緩んでしまった骨盤低筋を鍛える体操で、出産の経験がある女性にとっては「骨盤底トレーニング」と言った方が馴染みがあるかもしれませんね。

【 こんな人にオススメ 】

  • 膣内に納まっている子宮下垂(1度)を患っている女性
  • 進行を食い止めたい女性
  • 外科的治療に抵抗がある女性

劇的な改善は見込めないものの、継続する事で症状が改善するとされています。

また、骨盤底筋体操に加えて下記のような工夫を取り入れる事で、相乗効果が期待できますよ。

【 骨盤底への負担を減らす方法 】

  • 便通管理
  • 肥満の改善
  • 胴回りを締めつける着衣は避ける

但し、子宮が膣外へ脱出してしまった2度以上のケースでは、高い効果は期待できません。

保存的治療その2:フェミクッション

一昔前の「脱腸帯」と同じようなもので、下着のように着用して骨盤を外側から圧迫し、子宮の下垂を食い止める治療法です。

通信販売もしくは医療機関の窓口でしか販売されていませんので、誰にも知られずに購入できますよ。

【 こんな人にオススメ 】

  • 初期段階の女性のみ
  • 誰にも知られずに改善したい女性
  • 装着するだけで改善したい女性
  • 定期的な通院ができない女性

但し、フェミクッションによる保存的治療には下記のような難点も指摘されています。

【 フェミクッションの注意点 】

  • 重症の患者さんが使用しても、十分な効果は得られない
  • 根本的な治療法ではない
  • 一式約2万円前後と高額で、別売りの交換用品が必要
  • 毎日の着脱に手間がかかる
  • 使用目的が特異なため、事前に試着できない

特に、尿漏れの症状が現れている人には不向きだとされています。

保存的治療その3:ペッサリー療法

下垂している子宮を下から支えるストッパーとして、ペッサリーと呼ばれるリングを膣内に挿入する治療法です。

下記のような項目に当てはまる場合は、ペッサリーリングを挿入する保存的治療が第一選択となります。

【 こんな人にオススメ 】

  • 今後、出産する可能性がある女性
  • 排尿の不具合が少ない女性
  • 育児で忙しい女性
  • 40歳代で、外科的治療による精神的ダメージを受けたくない女性

数年前までは、医療機関で挿入し定期的な検診を受けるケースが一般的でしたが、近年では朝はめて夜外す「自己着脱方式」が普及しています。

但し、ペッサリー療法には下記のような難点も指摘されていますので、施術を受ける前に把握しておきましょう。

【 ペッサリー療法の注意点 】

  • 根本的な治療法ではないので、ペッサリーを取り出せば元の状態に戻る
  • ペッサリーを挿入しても、更に進行する可能性がある
  • あまりに進行した状態には対応できない
  • ペッサリーの圧迫により、腟がただれたり出血する事がある
  • ペッサリーが腟に絡みついて、医療機関でなければ外せない事がある
  • 長期間の挿入で膣壁が傷つき、膣炎や膣潰瘍を起こす事がある
  • リングが抜けなくなったり、すぐ抜けてしまう事がある

手術的治療その1:子宮摘出術や膣前壁形成など

重度の子宮脱に対して日本で最も多く行なわれているのは、下記のような手術です。

  • 子宮摘出術:下がってきた子宮を摘出する
  • 膣前壁形成:伸びた腟の一部を切除し、縫合によって縮め靱帯に固定する
  • 肛門挙筋縫合会陰形成:靭帯や筋膜などの再建術

子宮脱の根本治療として定評があり、膣の方からアプローチする方法が一般的。

開腹する必要がありませんので、手術時間も1時間半~2時間程度と短く、ほとんどの人が術後10日ほどで退院できます。

【 こんな人にオススメ 】

  • 症状が深刻で、日常生活に支障がある
  • 根本的な治療を希望する女性
  • 将来、子供を産む予定がない女性

但し、これらの外科的治療法には下記のような難点も指摘されています。

【 子宮摘出術などの注意点 】

  • 将来、子供を希望する女性には適さない
  • 腟を縫合して縮めると、腟が狭くなって性交に支障が出る
  • 腟に余裕を残すように手術すると、再発するリスクが高まる

手術的治療その2:ル・フォール手術

腟壁を子宮の壁に癒着させる手術で、子宮を温存したまま根本治療が見込める治療法です。

子宮の前面と背面を膣壁に癒着させる事で抵抗力が強まり、ほとんど子宮が出て来なくなります。

【 こんな人にオススメ 】

  • 根本治療を希望するが、子宮の摘出はしたくない女性
  • 局所麻酔が可能なので、心臓疾患などを理由に全身麻酔が使えない人でも受けられる

【 ル・フォール手術のメリット 】

  • 排尿障害がある人にも効果的
  • 歩行困難の症状にも効果的
  • 再発率が5%未満と低い
  • 合併症がほとんど無い

但し、ル・フォール手術には下記のような難点も指摘されています。

【 ル・フォール手術の注意点 】

  • 性生活に支障が出る場合がある
  • 膣の全部を塞いでしまうと、分泌物の排出が減少する

但し、膣の両端を縫わずに少しだけ開けて手術する事で、分泌物の減少は防げるとされています。

手術的治療その3:メッシュ手術(TVM)

合成繊維で作られたメッシュを縫い付け、緩んだ靱帯を補強する手術です。

正式名称を、Tension-Free Vaginal Mesh(TVM)と言い、下記の2種類に分類されます。

【 メッシュ手術の分類 】

  • TVM-A:膀胱と腟壁の間にメッシュを装着して補強する
  • TVM-P:直腸と腟壁の間にメッシュを装着して補強する

その人の症状に合わせて適応されますが、TVM-AとTVM-Pを同時に行う事も可能です。

また、従来の術式に比べてメリットが多いのも特長とされています。

【 再発率の比較 】

  • 従来の手術療法:10%~20%
  • メッシュ手術:5%~10%

【 身体への負担を比較 】

  • 従来の手術療法:術後、10日間は入院が必要
  • メッシュ手術:ほとんどの場合、術後7日目に退院できる

【 術後の性交への影響 】

  • 従来の手術療法:腟が狭くなり、性生活に支障が出る
  • メッシュ手術:腟が狭くならないので、性生活に支障が出にくい

但し、メッシュ手術には下記のような難点も指摘されています。

【 メッシュ手術の注意点 】

  • メッシュが露出して、再手術になる可能性がある(発生頻度=5%以下)
  • 術後の経過によっては、長期間の安静が必要になるケースもある

骨盤底筋体操で改善と予防を!

子宮脱の初期症状が見られる場合は、骨盤底筋の収縮力を高めるトレーニングが効果的です。

症状を改善したり進行を遅らせる効果はもちろん、軽症の腹圧性尿失禁にも有効なんですよ。

子宮下垂の予防にもなる骨盤底筋体操には、下記の3パターンがあります。

【 骨盤底筋体操の種類 】

  • 仰向けで寝ながら行う方法
  • 爪先立ちで行う方法
  • 椅子に座ったまま行う方法

まずは、3パターン全ての基本となる仰向けで寝ながら行う時の手順を見てみましょう。

仰向けで寝ながら行う時の手順

  • 仰向けの姿勢で床に寝たら、足の裏を床にぴったり付けたまま膝を立てる
  • 両足を肩幅に開く
  • 掌を床に向けて腕を両サイドに添えたら、全身の力を抜いてリラックス
  • 肛門と膣だけに意識を集中させて引き締める
  • そのまま5秒キープする
  • 力を抜いてリラックスする
  • この手順を5回繰り返す

イメージとしては、排尿中に尿を止める感覚と言ったら分かりやすいかもしれませんね。

爪先立ちのポイント

爪先立ちで行う場合も、仰向けの時と基本は一緒です。
違いは、肛門と膣だけに意識を集中させて引き締める時。
引き締める時にかかとを上げて爪先で立ち、5秒キープしたらかかとを床に付けましょう。

椅子で行うポイント

こちらも基本は同じですが、椅子に浅く腰かけながら行います。

引き締める時は、左右の太ももを強く引き寄せながら爪先を立てる動作を繰り返しましょう。

骨盤底筋体操の効果は、短期間では期待できません。

個人差はあるものの、最低でも2~3ヵ月は毎日1セットを目標にして続ける必要があります。

慣れてきたら、時間を置いて1日2セットや3セットと増やしていくのも良いですが、ゆっくりと丁寧に行わなければ意味がありません。

回数をこなす事よりも、肛門や膣をしっかり意識して引き締める事が肝心ですよ。

気付いて欲しい子宮脱のサイン!

子宮が下方向に降りてきていても、膣内に留まっていれば物理的な変化に気付きようがありません。

ですが、実際に子宮が膣内から脱出してくると下記のようなサインに気付く事があります。

【 子宮脱のサイン 】

  • 膣の入口や陰裂に、丸いモノが触れているような違和感
  • 何かが股に挟まっているような違和感
  • ピンポン玉のような異物が出てくる
  • 下腹部が、下方向に引っ張られる感じ

【 感触による見分け方 】

  • 子宮:丸くて少し硬い異物が触れる時
  • 膀胱:丸くて軟らかな異物が触れる時

経験者の多くが、お風呂に入っている時や排尿・排便時に気付いたと問診で回答しています。

お風呂で陰部を洗う時には、スポンジなどを使わず素手で洗った方がセルフチェックになりますよ。

日頃から軽くチェックしておくようにしましょう。

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