ママの食事で母乳の味が変わる?専門家でも分かれる難問だった!

ママの食事で母乳の味が変わる?専門家でも分かれる難問だった!
  • Twitter
  • hatena
  • facebook

育児書やインターネットで子育てのヒントを探しているママも多いでしょうが、中には全く正反対の意見を主張する専門家も多く、何を信じて良いのか混乱してしまいますよね。

特に多くのママを悩ませているのが「母乳の味」についての情報でしょう。

「ママの食事によって母乳の味が変化する!」と主張する医師もいれば「何の根拠もない!」と反論する医師もいて、それぞれもっともらしい根拠が挙げられています。

そこで今回は、母乳の味に関する情報を幅広く集めた上で、真っ向から対立する2つの意見について比較してみました。

ママの食事は母乳の味に影響する!?

まずは、ママの食事によって母乳の味が変化すると主張する専門家の見解を見てみましょう。

▼永田産婦人科(岐阜県)

  • 母乳の生産メカニズムは、ママの食事→血液→母乳
  • 母乳の味や質は、ママの食べた物によって変わることがある
  • お酒を飲むと5分もしないうちに明らかに不味くなる

▼堤ちはる先生(相模女子大学栄養学部教授)

  • ママの食事によって母乳の味は変化する
  • ママがカレーやニンニク料理を食べると、その風味を持つ母乳が出てくる

▼わんぱくキッズクリニック(静岡県)

  • 臭いや味が変化するという報告があり、カレーやガーリックなどの刺激物が顕著
  • 臭いや味の変化が赤ちゃんに悪い訳ではなく、授乳中でも極端な食事制限は必要ない

▼橋本こどもクリニック(山形県)

  • ママの食べた物によって味や匂いが変化する
  • 飲み始めはあっさりした母乳で、後半は脂肪分が多いこってりした母乳になる

▼利根中央病院(群馬県)

  • 成分には影響しないが、味はある程度変化する事が知られている
  • 母乳の味は、ママが食べた食事の香りに影響されている

根拠その1:食べ物の匂いによって「風味」が変わる!

ママの食事で母乳の味が変化すると主張する専門家の見解を見てみると、その多くに「匂い」や「刺激物」に関する指摘が目に付きます。

まさにこの「匂い」こそが、母乳の味が変化する要因の一つと考えられているんです!

医師と子どもの睡眠コンサルタントを兼任されている森田麻里子先生が医療ガバナンス学会に投稿した記事によると、食べ物の美味しさを構成する要素は味覚だけではなく「香り」も重要だと解説されています。

▼利根中央病院(群馬県)
食べ物の香り成分は母乳に移りやすい性質を持っていて、母乳の「風味」を微妙に変化させている。つまり、赤ちゃんはママと同じ食事の風味を授乳する度に味わっていると考えられる。

▼Mennella博士(モネル化学感覚研究所)
1991年「Pediatrics」誌で発表された研究結果によると、ママの食事が母乳の匂いに大きな影響を与えていると報告されています。

【 母乳と匂いの関係 】

  • 対象:8人のママ
  • 比較対象:1.5gのにんにくエキスが入ったカプセル/無味無臭のプラセボカプセル
  • 判定方法:服用から数時間の母乳に対し、11人の成人で匂いと飲み具合を調査
  • にんにく入り:2~3時間後の母乳に、にんにくのような匂いが確認された
  • プラセボカプセル:服用前後で母乳の匂いに変化は認められない

上記の調査結果から、ママが刺激物であるニンニクを食べると母乳の匂いもニンニク臭くなり風味が変わる!と推察され、カレーも同じような結果が予想されます。

ちなみに、ニンニクの強い風味は赤ちゃんに敬遠されるのでは?と連想するママも多いでしょうが、意外な事に下記のような調査結果が報告されているんです。

【 赤ちゃんとニンニクの相性 】

  • 乳房を吸う回数:プラセボよりニンニク入りのカプセルを飲んだ後の方が多かった
  • 授乳時間:ニンニク入りのカプセルを飲んだ後の方が、明らかに長かった

いつもの母乳よりニンニクの風味がプラスされた母乳の方を多めに飲むという事は、旨味を味わっているとも考えられますね。

根拠その2:脂肪分の量によって「食感」が変わる!

2つ目の根拠として挙げられるのが、母乳に含まれる脂肪の量についてです。

滋賀県で赤ちゃんのアレルギー治療に取り組んでいる医療法人弘鳳会によると、高脂肪の食事が母乳に与える影響について下記のように解説されています。

【 高脂肪の食事と母乳の関係 】

  • 脂肪の多い食事が続くと、黄色い油が浮いた母乳が出てくる事がある
  • 脂肪分が多すぎるドロドロした母乳は、不味くて乳腺炎の原因にもなり得る
  • 美味しい母乳とは、乳汁のにごりのない薄い青みがかった乳白色

確かに、脂肪分が多く含まれた高カロリーな食事はヘルシーな食事に比べてこってりとした濃厚な食感が特徴です。

その為、サラッとした母乳に飲み慣れている赤ちゃんが高脂肪の母乳を飲むと、食感の違いから味が変化したように感じたとしても不思議ではありません。

「美味しい母乳を分泌するには和食が一番!」という説にも一致していますね。

但し、味はともかく体重増加が芳しくない赤ちゃんにとっては、脂肪の含有率が高い後乳が推奨されています。

ママの食事は母乳の味に影響しない!?

ママの食事によって母乳の味が変わると主張する専門家が多い反面、影響しないと主張する専門家の見解も無視できません。

▼友利新(内科・皮膚科医)

  • ママの食事で母乳の味は変わらない
  • 乳腺炎と甘い食べ物に関係性はない

▼戸田千先生(産婦人科医・国際認定ラクテーション コンサルタント)

  • 世界母乳学会の調査で健常時と乳腺炎時の母乳成分を比較→わずか数%の差だった
  • 味に関係する塩分や乳糖成分の差が極わずかで、極端に味が変化するとは考えられない

▼森戸やすみ先生(小児科医)

  • 「美味しい」か「不味い」かを、客観的に計測する方法は確立されていない
  • 哺乳動物が母乳を飲むのは、美味しいからではなく飲まないと生命に関わるから
  • ママがお酒を飲むと母乳が体内で発酵するという説は、発酵と腐敗を取り違えている
  • 大量のニンニクを食べた後の母乳を飲んでも、哺乳行動に変化ナシという論文がある
  • 栄養状態の違う北欧とアフリカの母乳を比較しても、ほぼ同じ成分だった

根拠その1:食生活が違っても母乳の成分はほぼ同じ!

特に注目したいのは、食生活の違う人種でも母乳の成分がさほど変わらなかった!という調査結果でしょう。

もしママの食事が母乳の味に影響しているのなら、全く違う食生活を送っている北欧人とアフリカ人では、母乳の成分に違いがあるはずです。

森戸やすみ先生は、ご自身の著書でも同様のコンテンツを取り上げて「大きく偏った食生活でなければ人の母乳の成分はそうそう違わない!」と結論づけられています。

そもそも、美味しいか不味いかは人の好みによって違いますし、まして味によって赤ちゃんの飲む量が変化するとは考えにくいですよね。

根拠その2:乳腺炎でも母乳の成分変化はわずか!

「白い血液」と呼ばれている通り、母乳はママの血液から出来ています。

だからこそ、授乳中に食べても良いモノと食べない方が良いモノを区別してメニューを考えるママが多く、様々な情報が広まっています。

中でも代表的なのが、「甘い物や脂っぽい食べ物は控えるべき!」という意見でしょう。

甘い物や脂っぽい食事が多いと乳腺炎に成りやすく、乳腺炎が「うっ滞性」に悪化すると苦味と酸味が強くなるという話もよく耳にします。

ですが、世界母乳学会が医師向けに発行している雑誌には、健常時と乳腺炎時の母乳成分を比較した成分表が掲載されており、その差は微々たるモノだったと発表されているんです。

確かに、母乳の成分がほとんど変化しないのに味だけが変わるとは考えにくいですよね。

そもそも、高脂肪食と乳腺炎との関連性は証明されていない!と主張する医療関係者も多いんですよ。

【 高脂肪食と乳腺炎の関連性 】

  • 戸田千先生(産婦人科医・IBCLC):脂肪を食べたからと言って乳腺炎にはならない
  • わんぱくキッズクリニック(静岡県):成り易いと言われているが、明確な根拠はない
  • 宋美玄先生(産婦人科医・性科学者):因果関係はなく、授乳間隔や授乳姿勢の問題
  • さくらが丘小児科クリニック(東京都):乳腺炎と食事は無関係

さくらが丘小児科クリニックによると、油脂を大量に食べると組成は変化するものの、母乳中の脂肪が増える事もドロドロの母乳に変化する事もない!と解説されています。

朝と夜で母乳の味が変わる!?

母乳の味を大人が表現すると、「薄い甘味」や「おかゆの汁」などに似た味と言われていますよね。

そこで一つの疑問が湧いてきます!母乳の味は朝でも夜でも24時間いつも同じ味がするのでしょうか?

味博士として知られる鈴木隆一さんの協力の元、大手育児雑誌「ひよこクラブ」が行った調査によると、下記のような結果が報告されています。

【 朝と夜の違い 】

  • 判定方法:人の味覚を再現した味覚センサー装置
  • 基準:甘味・塩味・酸味・苦味・旨味の5要素でバランスを比較
  • 甘味:朝の母乳より夜の母乳の方が、数値的に強かった
  • 旨味:朝でも夜でも、数値的にほとんど変わらなかった

上記の情報から、同じママから分泌された母乳でも朝と夜で味に差がある!という事が分かりますね。

大人が飲んだ感想をまとめたアンケート調査ならともかく、こちらはAIを駆使した味覚センサー装置によって判定されています。

医療分野の研究結果とは言えないものの、人の味覚を数値化して目に見える形で表していますので、信憑性としては申し分ないでしょう。

鈴木隆一さんが考案した味覚センサー装置は、キリンやアサヒといった日本を代表する大手飲料メーカーの商品開発にも活用されており、食品と飲料の相性度まで計測できるんだとか。

続いていくつかの食材をママに食べてもらったところ、食べる前に搾乳した朝の母乳と食べた後に搾乳した夜の母乳とでは、下記のような違いが見られたそうです。

【 食材による影響 】

  • キムチ:甘味がやや強くなった
  • お酢ドリンク:酸味と苦味が少し強くなった
  • チョコレート:苦味と塩味が、わずかに強くなった
  • カレーライス:甘味がやや強くなり、酸味・苦味・塩味が少し弱くなった

ちなみに、上記の中で赤ちゃんの飲みが芳しくなかったのは、チョコレートとお酢ドリンク。

わずかながら苦味と酸味が強まったという結果から、本能的に避けたのでは?と推察されています。

【 味とリスクの関係 】

  • 苦味:毒物のリスクを知らせる味覚
  • 酸味:腐敗のリスクを知らせる味覚

新鮮母乳と冷凍母乳とでは味が違う!?

仕事と育児を両立しているママの多くは、下記のように授乳方法を使い分けていますよね。

【 授乳の使い分け 】

  • 自宅:直接授乳
  • 幼稚園や夜間:あらかじめストックしておいた搾母乳

中でも、最も保存期間が長いというメリットから搾乳した母乳を冷凍しているママも多いでしょう。

そこで一つの疑問が湧いてきます!直接授乳する時の新鮮母乳と冷凍後に解凍した搾母乳とでは、味に違いは無いのでしょうか?

昭和大学病院医学部小児科の新生児専門医であり日本母乳バンク協会の代表理事も務めている水野克己先生によると、冷凍した母乳の味について下記のように解説されています。

【 冷凍母乳の味 】

  • 冷凍すると多少は母乳の風味が落ちる
  • 冷凍→解凍した母乳をイヤがる赤ちゃんもいるが、割合としては極まれ

では、なぜ冷凍すると母乳の風味が落ちてしまうのでしょうか?

【 冷凍母乳のメカニズム 】

  • 冷凍すると母乳内の脂肪が分解される
  • 脂肪が分解されると、匂いの元である短鎖脂肪酸が増える
  • 短鎖脂肪酸には、揮発しやすく不快な匂いを放つという特性がある
冷凍→解凍した母乳は「生臭い!」という話をよく聞きますが、上記のメカニズムによって母乳の匂いが変化して風味が損なわれていたんですね。

ちなみに、母乳の風味を保つには下記の方法が推奨されています。

【 風味の劣化対策 】

  • 搾乳後、数時間は冷蔵庫で冷やしてから冷凍する
  • 母乳バッグごとプラスチック容器に入れて冷凍する

普段は冷凍母乳を飲んでくれない赤ちゃんでも、寝起きなど意識がボーっとしている時なら快調に飲んでくれる事もあるそうです。

但し、冷凍する事で脂肪が分解されて風味が落ちるからと言って、母乳が悪くなった訳ではありません!

確かに、新鮮母乳と比べると感染症予防に欠かせない「ばい菌」を食べてくれる生きた細胞は減少します。

ですが、母乳には様々な感染防止物質が大量に含まれていますので、冷凍しても全体的には殆ど減らないと言われているんです。

美味しい母乳とは味より乳質!

では、結局のところママの食事によって母乳の味は変化するのでしょうか?

ここまでの情報を元に、下記のようにまとめてみました。

【 結論 】

  • 影響を受ける事もあるが、風味や食感がわずかに変化する程度!
  • 極端に味が変わる事はなく、成分もほとんど変わらない!
  • 母乳の味を変化させる要因は、ママの食事以外にもある!
  • 赤ちゃんには美味しいから飲む、不味いから飲まない・・という判断基準はない!

確かに、我が子に美味しい母乳を飲ませたいと思うのが親心ではありますが、そもそも「美味しい母乳」とは味ではなく乳質が重要だと考えられています。

授乳中の食事に配慮するなら、母乳の味よりも乳質を高める食べ物をバランス良く取り入れたメニューを考えましょう。

SNSでシェア
  • Twitter
  • hatena
  • facebook

こちらの記事もオススメです

ページ先頭に戻る